※この記事の内容は令和2年1月に記載、令和4年1月に更新しています。

軍用地購入は「究極の相続税対策」なの?
沖縄の軍用地を購入すると、
「究極の相続税対策」になると言われています。

「タワーマンション節税」と同じく、実勢価格との差額を利用するスキームですね。
実際の取引価格と相続税評価額との差で節税対策になるということですが、
類似した判例により「節税のやりすぎ」と判断されると、その前提がひっくり返される可能性があるかもしれません。
この記事のポイント
- 基本:軍用地購入は相続税対策に有効
- 購入価格と特有の相続税評価がカギ
- かけこみなど「やりすぎ」は×?
軍用地購入はタワマン投資と違い「国の事情」が絡んでいるので国税の否認対象になりにくいのですが、
軍用地購入の本来の目的をどこに設定するか、が問われるこの問題について解説します。

筆者:この記事の信頼性
- 現役FP・宅地建物取引士
- 軍用地売買仲介実績あり
- 沖縄在住10年以上、最新事情に精通
沖縄の軍用地は希少性が高く、ほぼ市場に出回らないため、
ほとんどの不動産業者は専業でない限り、取り扱ったことすらないのが普通です(ホントです)。
経験に基づいた情報ですので、ぜひ参考にしてください。
相続財産と軍用地評価のおさらい


管理人は、基本的に軍用地での資産形成は有効ですよ、というスタンスをとっています。
積極的に買いなさい、ということではありませんので念のため。
軍用地を持っていると財産評価を下げられる?

一般的に言われている軍用地を利用した相続税節税スキームの考え方を以下にまとめます。
- 相続税は死亡した人(=被相続人)が持っていた財産にかかる
(ものすごく大雑把に言っています)
- 相続財産評価のルールでは、現金はそのままの金額、不動産は少し低めに評価される。
- そのため不動産を購入すると、評価減のため相続税の節税になる。
特に軍用地の固定資産税は民間地よりも低く設定されているので、相続税評価額はさらに低くなる。
また、路線価評価でなく「倍率評価」である。
- さらに融資を受けると、負債額がマイナスの資産として評価される。
- 加えて、相続税法第23条「地上権で存続期間の定めのないもの」の規定により評価を40%減額できる。
そのため、相続財産における軍用地は、現金等に比べ大幅に評価を抑えられる、ということです。
原理原則としては間違っていません。
実際に相続税対策として軍用地を購入する方も多いようです。
この基本的な考えが、「やりすぎ」と判断されるとひっくり返される可能性がある判例が出てきたから、厄介です。
「軍用地の節税スキーム」がほとんど問題視されていない理由

インターネット等で調べたところ、
軍用地による節税スキームで係争など問題化している事例は今のところないようです。
問題化していない理由
- 軍用地売買自体が希少のため、ほとんど事例がない
- 国の政策がからんでいるため、突っ込みづらい
- 軍施設が全国にあるわけでないので、共感しづらい
でも、少し考えてみてください。
自分が「国税庁の職員」として、
たとえば80歳以上の人が亡くなる直前に大量の軍用地を購入して、相続税を億単位で節税していたとしたら、
突っ込みたくなりませんか??
軍用地売買では、それが簡単にできてしまいます。
今のところ「事例が少ない」ので問題化してないようですが、
もし頭のいい誰かが、相続税節税のため大量に軍用地を仕込んで節税効果が表面化したとしたら、
いつか問題となるのではないかと推測します。

そうならないことを願いたいですね!
東京高裁判決と『6項適用』のポイント

不動産を活用した同様のスキームに、「タワーマンション投資」があります。
現金から不動産に資産組み換えすることで相続税の節税がみこめますが、
「やりすぎ」を国税庁から指摘された事例を紹介します。
令和3年4月27日東京高裁判決の解説

令和4年現在、「マンション投資」で話題となっている判例があります。
問題の基となっている裁判の詳細についてはネットで検索してみてください。
詳しく解説している記事がいくつも出てきます。

この事例では、令和3年4月27日東京高裁の控訴審で6項適用を適法とした地裁の判決を支持、国が勝訴しています。
概要を、ごくごく簡単に説明します。
- ある高齢の男性が生前に相続税の節税を目的としマンション2棟を約13億円で購入
- 数年後その男性は死亡。原告の相続人が相続税申告する際に、路線価評価および債務控除から相続税ゼロと申告
- 国税庁は約13億円超で購入したマンション2棟の評価額が市場の取引価格よりも著しく低いとし異議を主張、約3億円の追徴課税を求めた
- 原告は追徴課税の取り消しを求め提訴、東京地裁は2019年8月に国税庁の主張を認める判決、東京高裁でも国が勝訴
相続財産を国税庁通達に基づく解釈で路線価評価すると、
特に高額な都心のタワーマンションなどでは市場価格と著しく乖離するケースが出てくる、
それに国税庁がストップをかけた、という裁判判例です。
普段あまり意識することがなく見落としがちですが、相続税は相続人等が自ら相続財産を算出し、申告する税です。
つまり、特に不動産等は価格の算出に国税庁との見解の相違が生じやすいのです。
『財産評価基本通達第1章総則6項』のポイント

この裁判における国税庁側の見解の根拠になったのは、財産評価基本通達第1章総則6項に記載される一文です。
(この通達の定めにより難い場合の評価)
6 この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。
ポイントとなるのは、財産評価基本通達第1章総則6項の適用に明確な基準が定められていないこと。
「国税庁長官の指示を受けて評価」される、著しく不適当とみられる財産とは、
- 購入価格と相続税評価額との差が大きい
- 購入時点と相続が発生した時点とが近い
- 相続発生後、間を空けずに売却した
(この辺表現が難しいです)
このような財産のようです。
この裁判については不動産の売却まではしていませんが、相続税の算出プロセスにダメ出しされたわけですね。
軍用地の評価をどのように考えるか

今回のテーマの軍用地を利用した相続税対策のスキームでも、
実際の取引価格と相続税評価額の差が計算上あまりにも乖離する、
というところはかなり似通っている例に該当するのではないかと思われます。
この国税庁の見解および東京地裁の判決の影響は大きく、
軍用地の相続財産評価にもかなり微妙な判断が求められてくるのではないかと思います。
国税庁の裁量加減で常に財産評価が否認される可能性があるのは、
節税を目的とした今後の軍用地取引に少なからず影響を及ぼすのではないでしょうか。

軍用地も不動産ですので確実に現金より評価は落とせますが、
思い通りの節税効果を得られるか、は今後も判例を参考にしなければならないですね。
申告を依頼された税理士さんも、難しい選択を迫られそうです。

やりすぎはよくない、ということですね。
まとめ:軍用地購入の目的を明確に、ミドルリターン目的ならOK

このブログの裏テーマとして、
沖縄を大好きになってもらって、現役時代・退職後の生活を豊かにしていただきたい、
そのための情報を提供していきたい、という想いがあります。
そのための手段のひとつとして、沖縄の不動産を所有する、ということがあります。
そのための情報提供を積極的にしていこうと思っています。
沖縄に関わりを保つ手段として不動産を所有する、それ自体を目標とすることはとてもいいことだと思います。
ただ、もしその目的のひとつに相続税対策があるとしたら、軍用地の購入を慎重に考える必要が生じてきました。

基本的には国防政策が絡んでいるので、
かけこみで大量に現金から軍用地に資産組み換えする、などでなければ問題ないはずです。
ただ、相手は国税庁。
やりすぎと判断されれば、相続税対策として購入した軍用地が節税対策として通用しなくなるかもしれません。
相続税対策を目的として軍用地を購入する。
このような判断には「信頼できる税理士さん」との連携が必要です。
どこまで税理士さんが腹を括れるか?
相続発生後にこの依頼を受けてくれる税理士はどれくらいいるでしょうか。
資産をお持ちの方は、生前から相続に強い税理士との連携が必要と言えそうです。

やはり、軍用地購入は本来の目的である ローリスク・ロー~ミドルリターンを狙った投資戦略が最適だと思います。
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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